姫路靼再現プロジェクトの記録

第3歩 直前ミーティング

2011.8.19

 8月19日の午後、協伸の会議室。 姫路靼ひめじたん 再現プロジェクトの直前ミーティングが開かれました。参加メンバーは4人です。

 「まずはプロジェクトを通して、昔のひとのものづくりの感覚や方法を勉強したいですね。そして職人が勘でやっていた作業を論理的に裏付けしていきたい。さらにその結果を現代にアレンジして、これからの仕事で生かせるところまでいければいいですね」と、姫路靼への思いを語ったのは、当社代表の金田。同時に、プロジェクトの過程をしっかり記録に残す意義も力説しました。

 姫路靼に詳しい林久良さんは、今回のキーマンです。さまざまな資料とあわせて、かつてつくられた姫路靼を持ってきてくれました。実際に見ると、真っ白というより、少し生成り色っぽさが残る感じでしょうか。一同、実物の革を手に取って、このプロジェクトのゴール地点を確認しました。

 林さんは、江戸時代に姫路靼で製作された革細工も披露。「いま見ても、普通に使えるなあ」という声が上がりました。漆で装飾された美しい革鞄や革箱の様子は、下にある動画でご覧ください。また、こちらのページでも、江戸時代「姫路靼細工物」ギャラリー 15選として紹介しています。

 「楽しいことが始まりそうで、仕事のほうがおろそかになるかも...」と、微笑んだのは小松尾直利さん。福崎町の小松尾靴工房でオーダーメイドの靴をつくっています。再現プロジェクトは数か月わたり、かなり時間がとられますが、多少の支障は気に留めず、期待をふくらませていました。

 「足で踏むやつをいっぺん、やりたかった。革づくりの原点やからね」と、意気込むのは大崎哲生さん。大崎さんと金田は、同じ姫路市高木で、父の代からのお知り合いです。大崎さんは、せん包丁という道具を持参。皮の表面の毛を抜くために使う包丁で、この先、活躍してくれるでしょう。

 姫路靼は製作時には、塩と菜種油しか薬剤を使いません。これが姫路靼の一番の特徴です。

 そもそも「革をなめす」とは、生皮を腐らないように加工すること。姫路靼は、なめし剤としてタンニンもクロムも使わないのに、防腐性のある革ができあがあります。この事実に明治期のドイツ人学者は驚嘆しました。また石灰やエーテルも使用せず、白く仕上げられます。

 完成まで60~90日ぐらいかかります。10月の終わりから11月にかけてのころですね。

 じつは今回のプロジェクトでは、姫路靼のほかに、2種類の皮・革も再現しようと考えています。板目皮いためがわ熟革じゅくがわと呼ばれる皮・革です。初めて耳にする方も多いのではないでしょうか。

 板目皮は、姫路靼の製作途中段階でできる皮。原皮を川に漬けて、毛を抜いて、発酵させて、厚みをそろえて、それでできあがりです。塩や菜種油も使いません。「板目皮は、とても硬いです。かつては鎧甲冑や籠に使われました」と、林さん。うまくいけば、1週間ぐらいで完成する予定です。

 熟革も、製作途中段階の皮を加工してつくる革です。水分を含んでいるうちに、足で踏んで踏んで...。原皮の脂肪分の作用で、皮がなめされるそうです。やはり、塩、菜種油を使いません。60~70日で完成です。

 いよいよ来週スタートです。