姫路靼再現プロジェクトの記録

第20歩 足もみ、ヘラがけ

2011.9.21

 台風15号が通り抜けたせいか、少し涼しくなりました。秋です。足もみ、ヘラがけも少しは楽になるでしょう。

 足もみでは、キンチャク袋とは異なるスタイルを導入しました。皮を丸く巻いて、上から踏む方式。袋型とは異なる角度から、もみを入れられるのが良い点です。皮を効率よくもむには、決まった方法はありません。キンチャク袋にしたり、皮を丸く巻いたりして、とにかく足を動かし続けました。メンバー同士、とりとめない話を交わしながら......。

小松尾
「足もみのあと、何がありますか」
「天日干しが1週間ですわ。そのあと寝かし。寝かしは、10日から30日ぐらいですから、作業的には少し落ち着きます」
小松尾
「えー、天日干しって、1週間毎日ですか」
「天気のいい日に、太陽にあてるんですわ。裏表、ときどきひっくり返して」
小松尾
「いやあー、大変ですね」
「そんなことより、革ができたら、それで靴をつくってくださいよ」
小松尾
「この革は、切れないですよ。もったいなくて、おそれおおくて......」

 小松尾さんは小松尾靴工房を主宰し、オーダーメイドの靴を製作しています。こんなに苦労してつくる革は、おいそれと裁断できないと首を振ったのでした。

大崎
「皮の真ん中に穴があるから、ヘラがかけにくい。別の半裁を担当したほうが良かったわ。でも、専門の職人と違うから失敗はありきやね」
「そりゃそう。この革は1回やったぐらいで、簡単にできるもんじゃないですわ」

 うだうだと話しながら作業を進めているところに、雑誌社の記者とカメラマンがやって来ました。ムック本の取材のために来社したそうです。社内のいろいろな現場をまわって、最後に姫路靼ひめじたん再現プロジェクトの仕事場にも現れたわけです。

 小松尾さんが「汗、ボタボタ。手ぬぐいひとつじゃ追いつかないですよ」と、何時間も続く足もみ、ヘラがけの大変さを話すと、女性記者さんは「けっこう尻込みしますね」と、引き気味の微笑を浮かべていました。

 この取材の内容は、10月末日発売の「日本の革No4」(枻出版社)に掲載されるそうです。楽しみです。

 本日は、足もみ、ヘラがけをおこないました。ここまでで全行程の半分は終わりました。来週は天日干しです。


9月21日(水) 雨のち曇り 工場内24度

足もみ、ヘラがけ、天日干しの半裁別作業記録

・表中のグレー部分は、本日実施した作業
・作業時間左の小さい数字は、第何歩を表す

半 裁 I D A B C D
丸皮時の番号 No1 No1 No2 No2
担当 (第1~20歩)
小松尾 (第21~38歩)
小松尾 (第1~20歩)
(第21~38歩)
大崎 金田
重さ 4.5kg 4.5kg 5kg 5kg
裏漉き後の厚さ 1.2mm 1.2mm 1.5mm 1.5mm
1 天日干し 9 4時間10分 9 4時間10分
2 天日干し 10 6時間40分 10 6時間40分
3 天日干し 12 6時間30分 12 6時間30分 12 6時間30分 12 6時間30分
4 天日干し 13 8時間30分 13 8時間30分 13 8時間30分 13 8時間30分
5 天日干し 14 7時間40分 14 7時間40分 14 7時間40分 14 7時間40分
6 足もみ 16 3時間 16 2時間 16 2時間15分 16 30分
7 足もみ 17 30分 17 1時間20分 17 3時間50分
8 タイコ 17 カラ打ち5時間
9 天日干し 17 3分 17 4分 18 1時間 18 1時間
10 足もみ 17 30分 17 30分
11 洗い皮 17 表裏 17 表のみ 18 表のみ 18 表のみ
12 タイコ 18 カラ打ち1時間
13 天日干し 17 天日50分
室内2時間
17 天日40分 18 天日40分 18 天日5分
14 足もみ 17 30分 17 50分 18 1時間
15 天日干し 18 天日30分 18 天日20分 19 天日40分
16 ヘラがけ 17 40分 18 45分 18 50分
17 足もみ 18 30分 18 30分
18 ヘラがけ 18 1時間20分 19 45分
19 足もみ 15分
20 ヘラがけ 19 30分
21 バイブレ 19 縦横各1回
22 バタ振り 19 10分
23 機械ベラ 19 10分
24 足もみ 20 30分 20 1時間 20 1時間
25 ヘラがけ 20 50分 20 1時間40分 20 1時間